2026年10月1日カスハラ防止法施行に向けて
こんにちは。国分寺で社会保険労務士を営んでいる岡本です。
不定期ですがブログを書いていこうと思います。
今回は10月1日より施行される通称カスハラ防止法をテーマに記事を書きたいと思います。
会社として何を対応すべきかといった記事はたくさんあるので、ちょっと違った法律的視点で書いていきたいと思います。
そもそもカスハラ防止法とは?
カスハラ防止法は通称で、労働施策総合推進法の中に記載されているカスタマーハラスメントに対する事業主等のとるべき義務などについて記載された部分をカスハラ防止法と呼んでいます。
カスハラ防止法はあくまで「事業主」にカスハラを防止すべき措置等を行うことを義務付けているのであり、カスタマー側にカスハラをしないように定めている内容ではありません。
また、直接的な罰則(罰金や懲役)が定められていないのも特徴です。
罰則がないなら守らなくてもよい?
カスハラ防止法に罰則がないなら特に対応しなくてもよいのでは?という疑問が浮かぶ方もおられると思います。直接的な罰則がなくても対応を怠れば以下のような不利益が考えられます。一例を紹介します。
・企業名の公表
カスハラ対策を行わず、注意・指導にも応じない場合や悪質な場合は企業名の公表を行うとされています。会社のブランドイメージの大きな毀損につながります。
・離職率の増加、エンゲージメントの低下
カスハラを受けたことをきっかけに退職を考えた従業員は最近のある調査によると約75%もあるようです。あくまで「考えた」人であり実際に退職した割合ではありませんがカスハラの影響が大きいことがわかります。また、カスハラが横行している会社ではやる気や会社への帰属意識などエンゲージメントが低下することも想像に難しくありません。
・採用にも影響が
上記離職率に影響があることは当然採用にも影響がでてきます。SNS等で個人でなんでも発信できる時代となり、転職サイトなどにも会社の口コミをまとめられている今の世の中では、企業名の公表までされなくても、カスハラ対応を行わない会社であれば様々なルートから世の中に伝わってきます。
・訴訟などのリスク
カスハラ防止法そのものには罰則がないことはすでにお伝えしましたが、カスハラ防止法を無視してカスハラによるトラブルが発生するとそれが安全配慮義務違反となり、不法行為もしくは債務不履行 などを理由として民事訴訟にでの慰謝料請求などにつながる可能性があります。慰謝料自体の金額が莫大になることは少ないかもしれませんが対応にかかる時間をコストに置き換えた場合、会社へのダメージは少なくないものと考えます。
会社ばかり対応を迫られてカスタマーはやったもの勝ちではないか
カスハラ防止法は原則として事業主を対象としているため、カスハラの抑止力にならないのではないかという意見もよく聞きます。しかし、正しくカスハラ対策をとることでカスハラに対する大きな抑止力になると考えられます。
・カスハラに対する罰則
カスハラ防止法のカスハラ当事者への罰則はありませんが、内容によっては既存の法律で罰則の適用が考えられます。一例を紹介します。
執拗なクレーム、長時間の拘束や怒鳴り散らすなど業務を妨害するような行為を行った場合は威力業務妨害罪が適用される可能性があります。
土下座の強要や本来不可能な返金対応を迫るなどした場合は強要罪が適用されえる可能性があります。
SNSなどに事実と異なる書き込みや話を大きく盛る、従業員の個人名を上げて誹謗中傷を行うなどした場合は名誉毀損罪が適用される可能性があります。
そのほかにも様々な罪状が考えられ、刑法に該当する場合は警察を呼んで対応してもらうことが可能です。民法上も損害賠償請求などがケースによっては考えられますが、かかる手間と時間を考えると会社側からカスハラ当事者への民事訴訟を行うのはなかなかハードルが高いものと考えます。
しかしながら某すしチェーンでの迷惑行為などは損害賠償を求めて提訴されました(最終的には調停が成立し、訴えを取り下げ)。各社のカスハラ防止策が広まっていくことで自然とカスハラの抑止が行われて行くことになるでしょう。
結局何すればいいの?
初めに記載したようにたくさんカスハラに関する記事があるので参照してください(笑)
厚労省からも分かりやすいパンフレットやリーフレットが発行されているので参考にしてみてください。
社労士としては就業規則を整備しましょう、相談窓口を設置しましょうなど伝えるべきなのでしょうが、本当にカスハラを対策するのであれば法律的な立て付けよりも実効性を重要視してください。書面上しっかりとルールがあってもカスハラ防止になっていない会社と、就業規則など規定は作っていないがしっかりとカスハラ対策ができている企業では後者のほうが会社として優れて得いるのは言うまでもありません。
業種ごとにどのような対策を行うのが良いのかは変わってきます。実効性のあるカスハラ対策を考えるにあたって重要なポイントを整理します。
・現にカスハラを受けやすい現場にいる人の意見をしっかりと聞いて反映する。
どうしても法律的な対応から始めようとすると上層部や人事・総務部などでルールを作りがちです。しかし現場の声が入っていないと実際に起こるシチュエーションと想定していたものが大きく乖離することになります。全員の意見を聞くことは実際には難しいですが現場リーダーやアルバイトスタッフなどの一部の人をマニュアル作成の会議に組み込むなどして実態とのすり合わせを行ってください。
・刑法に該当しそうならば躊躇なく警察に連絡する
カスハラ当事者の行為が場合によっては刑法に該当する可能性があることはすでにご説明したところです。一般の人にとって「警察に通報します」は相当な抑止力となります。そうはいっても脅しだろと思われては元も子もないため、悪質だと判断したら「躊躇なく」警察に連絡してください。ある知り合いの社労士さんのお客様企業では、近所の交番にカスハラがあった場合にご連絡することがる旨を事前にお伝えしたところ「我々はそのためにいます」と心強いお言葉をいただいたというお話を聞きました。大事にしたくない気持ちもわかりますが、従業員の安全を第一に行動するようにしてください。
・カスハラ対応は二人以上で
カスハラか正当なクレームか判断がつかない場合でも、ひとりで対応すると対応車に大きなストレスとプレッシャーがかかります。また、カスタマー側も大きな態度に出やすくなる傾向があります。初動対応として重要なので「もめそうだなと思ったらさっと近くの人がフォローに入る」ことです。対応する人数が多いとカスタマー側も少し圧迫感を感じ怒鳴るなどの行動が少なくなるという話を聞きます。従業員も自分で全て抱えなくてよいという状況が安心感を生みます。
まとめ
カスハラ防止法の法的な視点と実効性のあるカスハラ対策のポイント、いかがだったでしょうか。今回の法改正をきっかけとして、従業員を守れるカスハラ対策を始めてもらえると嬉しいです。
より具体的な対策や総合的な労務対策を行いたい方はぜひ社労士との顧問契約をご検討ください。
法律の〇×だけでなく、自社の実態に合った対応をご希望の方は是非弊所にお問い合わせ得ください。
ファーストステップ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 岡本 純輝
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